続・著作権延長ですって。(その1)

「日本文藝著作権センター」なるところから出されている「文藝著作権通信」の第7号に「著作権保護期間の延長に関するQ&A」なるものが載っている。自分では著作権保護期間の延長に関しては中立の立場のつもりだけど,“香ばしい”ことが書いてあるので,ちょっとツッコミ! ホントは「A」も引用すると解りやすいんだけど,“引用の要件”内に納まるか微妙なので,基本的に「Q」のみ引用(引用というよりは参照指示ですな!)。

Q、保護期間を延長しても当の作家は死んでしまっているわけですから、作家の創作意欲につながるとは思えません。

保護期間が長いと芸術として評価され,高い評価が得られることで創作意欲が高まるというようなことを書いてらっしゃるのですが,保護期間と芸術としての評価とは別の次元の話で,保護期間内にあっても評価されないものはされないし,保護期間が満了していようが評価されるものはされる。そもそも,現代において評価されていると言っていいであろうルネサンス期の芸術,当時,著作権の“チョ”の字もなかったと思うんだけど,いかが? って言うか,日本文藝著作権センター様は保護期間が満了すると同時に評価を「0」にされるので??

Q、保護期間の延長は一般の読者にどんな影響をもたらすのでしょうか。

「読者の皆さんにご負担をおかけすることはない」とおっしゃいますが,著作権を制限する各規定を越えた利用をしたい場合,使いたい側からすれば面倒が増えることは確かじゃないかな?! まぁ,権利を持つ側からすれば「使いたいんだから面倒を厭わないの当然だ」という理屈もあるだろうけど,使うためのハードルが極度に高いと,せっかくの芸術としての評価が,別の方面から崩れることになりますゼ!

ヤッパリ,簡易に許諾が得られるシステムを作るのが先だと思うなぁ! じゃなきゃ次(↓)の「ご遺族の権利」(つまり金)にはつながらないと思うけど!?

Q、最近は人間が長生きするようになりました。90歳、100歳まで生きる作家も珍しくありません。そこから70年も保護されるということになると、妻子ではなく、孫や曾孫の代まで財産権が保護されることになります。そのようなことが必要なのでしょうか。

「若死にする作家がいないわけではありません」ってことですが,日本書籍出版協会の「出版契約に関する実態調査」の3ページによれば,この調査が完全に実態と一致していないとしても,約3割が“買取原稿払い方式”だそうで ...。

総じて若い作家ほど“印税方式”よりも“買取原稿払い方式”になる可能性が高いでしょうから,保護期間を延長したとしても,若死にした作家の遺族にはメリットは極めて低いんじゃないかと思うんだけど,いかが?

それから,「作家の生活を支えた妻子などご遺族の権利を保護することはぜひとも必要です」ってことですが,日本文藝著作権センター様は,例えば,不幸にも早くに亡くなられた(って言うか,以下の例の場合,いつ死んだかは,あまり関係がないけど)家具職人とか宮大工のご遺族の“権利”については,どのようにお考えで? 応用美術の類は著作権法による保護の範囲ではないから知らないとでも? 神社仏閣が建築の著作物に該当する可能性が高く,保護の対象だとしても職人のことまでは知らないとでも?

モノを創るという部分で近縁の職業だと思いますが,そういった“周辺”部分にも配慮した要望じゃないと“自分勝手”にしか見えませんよ。まぁ,“要望”というモノは自分勝手でいいのかもしれませんがね!

Q、「ミッキーマウス法案」という言葉があるように、著作権保護期間の延長に対しては、一般の利用者からの反対の声も大きいのではないでしょうか。

ミッキーマウス保護法”の批判は別に映画の著作物に限った話じゃないと思いますけど,いかが? ただ,個人的には,映画の著作物であれ,言語の著作物であれ,音楽の著作物であれ,“死後○○年”ではなく“公表後○○年”の方がいいと思っているので,映画の著作物の保護期間に関して言えば,英仏独あたりより米の方がいいような気がする。

そもそも,“ミッキーマウス保護法”が批判されるのは「保護期間として長すぎる」ということもあるけど,成立に至るまでの経緯やら目的やらがアヤシイからだと思うんだけど,いかが?

以下のQ&Aに対するツッコミは機会を改めるとして,囲みの「世界の主要国の著作権保護期間」の表は,あまりにヒドくない? 70年のところは,かなりの数を列記した上に「等多数」なんてモノまで付いているのに,50年のところは日本だけ?? 保護期間を70年に延長することを求める趣旨のモノだから,恣意的に列記する保護期間70年未満の国を減らすまでは許すとして,少なくとも50年の方にも「等多数」ぐらいは付けるべきだと思うけどなぁ!! ついでに言うと,保護期間が50年未満の国だってないことはないわけだし ...。